店舗の出店を検討する際、物件選定は最も重要な判断の一つです。
その際に必ず検討対象となるのが「居抜き物件とスケルトン物件のどちらを選ぶか」という選択です。
これらの物件タイプによって、初期投資額、工期、デザインの自由度、運用上の柔軟性が大きく異なります。
本記事では、工務店の実務経験に基づいて、居抜き物件とスケルトン物件の定義、費用面・工期・デザイン自由度の比較、そしてそれぞれが向いているケースについて、詳しく解説いたします。
居抜き物件とスケルトン物件の定義
まず、これら二つの物件タイプの定義を明確にしておきましょう。
居抜き物件とは、前のテナント(店舗)が使用していた設備や内装が、そのまま残されている物件です。壁、床、天井、照明、エアコン、給排水設備、ガス設備などが既に完備されており、テーブルやカウンター、厨房機器などの什器類も残されていることがあります。
要は、「前の店舗営業に必要だった設備が、そのままの状態で手に入る」というのが居抜き物件の特徴です。
スケルトン物件とは、建物の躯体(柱や梁、コンクリート床など)だけが残されている状態で、内装や設備がほぼない物件です。壁も床も天井も、完全に取り払われているか、むき出しの状態になっています。このような物件からは、設計段階でゼロからすべてを決めることができます。

費用面の比較
居抜き物件とスケルトン物件で、最も大きな違いが現れるのが初期投資額です。
居抜き物件の場合、既存の内装や設備を活用できるため、内装工事費を大幅に削減することができます。一般的には、スケルトン物件に比べて、内装工事費は30パーセントから50パーセント程度削減できます。
例えば、同じ30坪の飲食店の場合、スケルトン物件であれば1,500万円から3,000万円の工事費が必要かもしれませんが、居抜き物件であれば1,000万円から2,000万円程度で済むことが多くあります。
ただし、注意点があります。居抜き物件でも、既存設備をそのまま使用できないことがあります。前のテナントと異なる業種で出店する場合、既存設備が活用できないこともあります。
例えば、美容室の居抜き物件を飲食店に変更する場合、厨房設備がないため、新たに導入する必要があります。このような場合は、費用削減のメリットが大幅に減少します。
また、既存設備のリフォーム費用も考慮する必要があります。既存設備が老朽化していたり、故障していたりする場合は、修理または交換が必要になり、追加費用が発生します。「居抜き=安い」と単純に考えるのではなく、既存設備の状態を詳しく調査した上で、総コストを比較することが重要です。
スケルトン物件の場合、内装工事費は高くなりますが、設計の自由度が最大限に活かされるため、長期的には経営効率が良い可能性があります。例えば、動線設計を最適化したり、顧客満足度を高める空間設計ができたりします。
工期の比較
工期についても、両者に大きな違いがあります。
居抜き物件の場合、既存設備をそのまま活用できれば、工期は大幅に短縮されます。
内装工事が必要ない場合、わずか2週間から4週間で施工が完了することもあります。既存の給排水配管やガス配管を活用できれば、これらの工事も不要になります。
このため、出店から営業開始までの期間を短縮でき、機会損失を減らすことができます。
ただし、既存設備を部分的に改装する場合は、工期が延びることがあります。
既存設備を解体する際に、予期しない問題が発生することもあります。例えば、壁を開いてみたら既存配管があった、躯体にひび割れがあったなど、事前調査では気づかない問題が発見されることもあります。
スケルトン物件の場合、内装工事から設備工事まで、すべての工事が必要なため、工期は3ヶ月から6ヶ月程度が目安となります。
工事が複雑になれば、さらに期間が延びることもあります。ただし、新規に設計・施工するため、工事の流れが明確で、スケジュール管理がしやすいというメリットがあります。
デザイン自由度の比較
店舗のブランドイメージや経営コンセプトを実現する上で、デザインの自由度は重要な要素です。
居抜き物件の場合、既存の壁、床、天井、柱などが固定されているため、デザイン上の制約があります。例えば、希望する色彩計画を実現したくても、既存の壁色を変更する必要があり、工事費が発生します。また、既存の柱が邪魔になる場合や、既存の天井高が低い場合など、構造的な制約を受けることもあります。
一方で、既存設備を活用することで、独特のビンテージ感や歴史感を演出できることもあります。前のテナントの雰囲気を部分的に活かしながら、新しいコンセプトを融合させるデザインは、個性的で魅力的な店舗につながることがあります。
スケルトン物件の場合、デザイン上の自由度は最大限です。
壁、床、天井、照明、配色など、すべてをゼロから設計できます。ブランドイメージに完全に合致した空間を実現することが可能です。
また、将来的なリノベーションも容易です。ただし、この自由度を活かすためには、設計段階での丁寧な検討が必要です。不明確な設計のまま施工に入ると、期待以上の成果が得られないことがあります。
それぞれのメリット・デメリット
ここで、居抜き物件とスケルトン物件のメリット・デメリットを整理します。
居抜き物件のメリットは、初期投資額の削減、工期の短縮、営業開始までの期間短縮による機会損失の減少です。これらは、事業開始時の資金負担を軽減し、早期の売上開始を可能にします。
居抜き物件のデメリットは、既存設備の活用が限定されることがあること、既存設備の老朽化への対応費用が発生する可能性があること、デザイン自由度の制限です。また、前のテナントが使用していた設備のため、故障のリスクが高いことも懸念されます。
スケルトン物件のメリットは、デザイン自由度の最大化、最新の設備を導入できること、長期的な経営効率の向上です。また、新規設計・施工のため、工事の流れが明確で、スケジュール管理がしやすいというメリットもあります。
スケルトン物件のデメリットは、初期投資額が高いこと、工期が長いこと、営業開始までの期間が長いことです。資金面と時間面での負担が大きくなります。
選択の判断基準
居抜き物件とスケルトン物件のどちらを選ぶかは、以下のような要因を総合的に判断して決めることをお勧めします。
資金面に余裕がある場合は、スケルトン物件でブランドイメージに合致した設計・施工を実現することが、長期的には経営効率につながることがあります。一方、初期投資額を抑えたい場合は、居抜き物件を選ぶ価値があります。
業種の専門性も重要です。飲食店など、設備が複雑で業種特有の要件が多い業種の場合、既存設備の活用可能性が高いため、居抜き物件が向いていることがあります。一方、物販店など、設備が簡潔な業種の場合、スケルトン物件でも工事費が比較的抑えられるため、デザイン自由度を優先することもできます。
営業開始の時期も重要です。早期営業開始が経営上重要な場合は、工期が短い居抜き物件が向いています。一方、営業開始時期に余裕がある場合は、スケルトン物件で入念な設計・施工を行うことができます。
既存設備の状態も重要です。既存設備が充実していて、かつ良好な状態にある居抜き物件は、大きなコスト削減が期待できます。一方、既存設備が老朽化していたり、希望する業種に適さなかったりする場合は、スケルトン物件の方が総コストが安くなることもあります。
注意点
居抜き物件を選ぶ場合、既存設備の詳細な調査が不可欠です。電気容量が不足していないか、ガス配管は十分か、給排水設備は正常に機能するかなど、実際に使用できる状態にあるかを確認してください。工務店に現地調査を依頼し、既存設備の活用可能性と、修理・交換が必要な設備を明確にしてから、見積もりを取得することが重要です。
スケルトン物件を選ぶ場合、設計段階での丁寧な検討が重要です。躯体の状態を詳しく調査し、構造的な制約がないか確認してください。また、電気容量やガス供給量が十分か、給排水設備の位置は適切かなど、施工に影響する要素を事前に把握することが重要です。
まとめ
居抜き物件とスケルトン物件は、それぞれ異なるメリット・デメリットを持っています。初期投資額と工期の短縮を優先する場合は居抜き物件が向いており、デザイン自由度と長期的な経営効率を優先する場合はスケルトン物件が向いています。
重要なのは、あなたのビジネスプラン、資金状況、営業開始時期などを総合的に考慮して、最適な選択をすることです。
お店の工務店では、物件選定の段階から関わることで、既存設備の活用可能性を正確に判断し、最適な物件選択をサポートしています。また、選択した物件タイプに応じて、最も効率的な設計・施工プランをご提案することが可能です。
店舗出店の物件選定についてのご相談は、いつでもお気軽にお問い合わせください。無料の初期相談の中で、あなたのビジネスプランに最適な物件選定と施工プランをご提案させていただきます。

